ストレングスファインダーの資質の中には、いつも周りを元気にしてくれる「ポジティブ」や、話が上手な「コミュニケーション」、猛烈に仕事をこなせる「達成欲」など、エネルギーが高くて目立ちやすい才能がある一方、比較的目立ちにくい「じっくり」型の才能があります。これらの資質は、「時間」が大切な要素なので、一見スピード感に欠ける印象を持たれる場合がありますが、うまく使うと、周りの人に多くの気づきをもたらし、手戻りが少ないので結果的に時間を節約できて成果をもたらせる、素晴らしい才能です。
目立ちにくい「じっくり型」の資質
コーチをさせていただく中で、初めてお会いするときに、自信を失っていたり、自己肯定感が低くて、「私なんて」という言葉を多く使われる方がいます。時には、思いが溢れて涙が止まらないこともしばしばです。
そんな方の中には、一見すると目立ちにくい「じっくり型」の資質を上位に多く持っている場合があります。具体的には、「慎重さ」、「親密性」、「内省」、などです。
「慎重さ」はリスクが見える才能で、十分に時間をかけて準備する才能でもあります。私のように上位にない人間からすると、私が100回見直しても見落とす間違いやリスクを、1回で気づいてくれる、信じられない才能でもあります。ただ、この方がそばにいてくれると、何も問題が起きないので、その有難さに気づきにくいのです。また、スピード感を持ってタスクをこなすタイプの方からは、「遅い」とか、「すぐに動けない」などと評価され、傷ついてしまうこともあるようです。
「親密性」は、仲良くなるまでに時間がかかるものの、一度信頼関係を築くことができると、深く、固く、長い関係性を維持することができる才能です。親密性をうまく使っているマネジャーさんは、部下を家族のように大切にし、時には厳しい言葉で叱咤激励して部下を育てる、まさに「親分」的なリーダーになります。ただ、関係性を作るまでに時間がかかるので、「人見知り」、「人付き合いが苦手」と思われてしまったり、自分自身でもそう思い込んでしまい、人に対してバリアを作ってしまう可能性があります。
「内省」は思考する才能、別名「哲学者の才能」とも言います。何かの目的のために考えるのではなく、考えることそのものが目的であり、自然と繰り返す「行動」とも言えます。「内省」の方の強みは、何と言っても思考の深さです。内省の方が時間をかけて考えて繰り出す言葉は、整理されていてわかりやすく、多角的な観点で考えられているので、「そんな見方もあるのか!」と気づかされることが多いです。ただ、言語化するまでに時間がかかるので、会議でいきなりアジェンダを見せられて意見を求められる場面ではうまく話せず、「口下手である」「対応が遅い」などと誤解されてしまうことも多いようです。
「じっくり型」資質の活かし方を知り、狙って使う
ストレングスファインダーの34資質は、どの資質がより成果が上がりやすいか、等の優劣が無いことが実証研究でわかっています。また、ハイパフォーマーが成果を上げられたのは、自分の資質を活かせる環境にあった(上司に恵まれていた)、もしくは自分が意識して使うことができた、ということも分かっています。
ということは、この3つの資質も、まずはその素晴らしさを理解し、自分の強みとして言語化できること、周りに理解してもらって資質が活かせる環境を作ることが、成功の秘訣といえると思います。この3つの資質を活かすために共通するのは、「時間」です。 「慎重さ」を活かすならば、まずはリスクを想定したり対応するなど、準備する時間を確保すること、過去の事例やサンプルなどの情報があると助かること等を、周りにリクエストすることも良いでしょう。「慎重さ」が働くのは、新しいことに取り組むときだけで、経験を積むとスピードは上がってくることを自覚することも大事です。
「親密性」にも時間が必要です。いきなり多くの人と仲良くなろうと焦らず、まずは話ができそうな人は誰か、じっくりと見極めて1人ずつ、少しずつ話をしてみればよいと思います。初めての人に合うのは緊張するし、「人見知り」と思われるかもしれませんが、それも親密性の才能なので、割り切ることも大事です。人数が多くなくても、1人でも心を許せる人ができると、安心してのびのびと成果を上げることができるのが親密性の強みです。
「内省」を活かすには、じっくりと一人で思考を深める時間をとること、これが一番です。スピード感を持って答えを出し、対応するのも一つのやり方ですが、動く前にじっくりと多角的に考え、答えを出すことで、その後の手戻りがなく、結局は時間を節約できた、ということも有るはずです。会議の前にアジェンダをもらっておき、考えてから臨む、等ができるように周囲に理解を求めるとよいと思います。
セッションさせていただく中で感じるのは、「じっくり型」の資質を持つ方が、ご自身の才能を強みとして認識され、自信を持たれてからの飛躍の大きさです。不確実で変化が激しい時代だからこそ、時間をかけて物事の本質を深く考え、準備し、人を関わることができるこの才能が、ますます必要だと感じます。
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